神経調整で安心感を得る〜ポリヴェーガル理論

去年の3月から始まったコロナによるロックダウン、1年たったまま、世の中は相変わらず混沌としたまま。この1年の間に本当に色々な気づきがありました。普段の忙しい生活の中ではあり得なかったことです。自分を見つめ直すことで、神経の「凍りつき」と「闘争と逃走」のパターンがわかってきた気がします。

ポリヴェーガル理論の話をします。ポリヴェーガル理論のポリは多くの、という意味、ヴェーガルはヴェガス神経のこと。スティーブン=ポアジャス博士が1994年に発表したこの学説は、アメリカのセラピー業界を席巻し、今ではいろいろなセラピーの場で取り入れられています。この理論によると、哺乳類の自律神経の中にあり、何億年もの月日をかけて進化してきヴェガス神経(迷走神経)は3つに枝分かれをし、自分の「安全」を守って生存するために反応を起こすのです。


スティーヴン=ポアジャス博士

1) 「凍りつき」反応ー5億年前に哺乳類の進化の結果生まれた、もっとも原始的な反応。この神経の枝は背中側を流れ、脳幹から始まり、腸内に多く枝分かれしています。副交感神経が過剰反応したとき、心身をシャットダウンするのです。ジャングルでライオンに襲われたシマウマは噛みつかれた瞬間に失神します。これは哺乳類が恐怖を感じた時に起こる反応で、殺される苦しみを感じなくてもよくするために神経が自律的に起こす反応です。事故現場で怪我をした人が失神するのも同じで、体を保護するためにも神経は血圧と心拍数を下げてエコなモードにする必要があり、その結果人は失神し、痛みを感じなくてもよくなります。引きこもり、ウツ、疲労感、向上心が持てない、目的意識が持てない、といった傾向もこの神経反応の良い例です。

2) 「闘争か逃走」反応ーこれはヴェガス神経ではなく、交感神経の反応です。ジャングルでライオンが近くにいるのを察知したシマウマは全速力で逃走します。(逃走反応)又は仮に赤ちゃんのシマウマがそばにいたとしたら、母親は逆にライオンに向かっていくかもしれません。(闘争反応)

これはピンチに遭遇したときに哺乳類の交感神経がなす技です。火事場の馬鹿力もこれと同じ原理です。緊張、興奮、不安、パニックといった感情、理由のわからない怒りの感情もここに部類します。

3)「つながる」社交反応ーヴェガス神経の反応の中でも最も新しく進化したもの(2億年前!)がここになります。これは脳幹から胸を通って横隔膜の下まで繋がっている神経。まさしく「ハートの神経」とも言えるでしょう。これは私たちが社会や人と繋がっていくことに喜びと安心感を感じる反応で、最も理想的反応と言えます。この神経反応が優勢になとき、哺乳類は顔の表情を読み取りあってスキンシップをします。犬猫がお互いを舐め合ったり、赤ちゃんがお母さんの優しい顔と声を聞いて安心するのもこの社会反応となります。私たちは人と会って相手の気持ちになって話をきいてあげることができ、お互いに共感しあいながら親交を深めていくのです。

コロナのソーシャルディスタンシングの中で、社会反応を促していくのが難しい時代となりました。それでもたとえZoomを通してでも人と会って話をし、お互いの目を見て安心感を共有できる、というのは本当に素晴らしいことなのです。

 

 

 

4 thoughts on “神経調整で安心感を得る〜ポリヴェーガル理論

  1. 堀井 公美子 より:

    こんにちは堀井です

    早速質問です‍♀️

    ヴェガス神経は

    副交感神経の1つと捉えていいのですか?

    最近、ヨガの雑誌で「自律神経は3っ有る」

    と言うタイトを見ました。

    自律神経は

    ○交感神経

    ○副交感神経・ヴェガス神経

    で正しいですか?

    また、

    ヴェガス神経と

    原始反射についてですが

    恐怖麻痺性反射とモロー反射が

    ヴェガス神経の反射と似ている様に思います

    原始反射は子どもの反射ですが

    今、大人でも原始反射の残存でフリーズや

    問題行動や生きづらさなどが出ている方が

    多い様に思います、、

    ヴェガス神経と原始反射の関係性について

    分かる範囲内で教えて頂きたいです。

    お願いします☺️

    1. yoga tune up より:

      堀江様

      ご質問をありがとうございました。

      ヴェガス神経は
      副交感神経の1つと捉えていいのですか?     

      ―そうです。

      最近、ヨガの雑誌で「自律神経は3っ有る」
      と言うタイトを見ました。
      自律神経は
      ○交感神経
      ○副交感神経・ヴェガス神経
      で正しいですか?

      ―その通りです。そのヨガ雑誌を読んでいないので何が書いてあったのかわからないのですが、解剖学的系統別に考えると腸管神経を含む場合もあるようです。腸管神経内にはヴェガス神経が豊富に流れています。

      また、
      ヴェガス神経と
      原始反射についてですが
      恐怖麻痺性反射とモロー反射が
      ヴェガス神経の反射と似ている様に思います
      原始反射は子どもの反射ですが
      今、大人でも原始反射の残存でフリーズや
      問題行動や生きづらさなどが出ている方が
      多い様に思います、、
      ヴェガス神経と原始反射の関係性について
      分かる範囲内で教えて頂きたいです。
      お願いします☺️

      ―原始反射とヴェガス神経の関連付けをした文献は特に見当たりませんが、基本的には全く同じことを違った言語で表現しているのだと解釈しています。

      ―胎児として母親の体に宿ってから3歳になるまでに人間の基本的社会神経回路が確立されるため、大人になってから説明のできない神経反応に悩まされることが多いのです。ご自身で神経の調整の必要性に気づくことがとても大切です。

      ―アメリカではヴェガス神経とポリヴェーガルの理論に基づいたさまざまなセラピーが編み出され、効果的に療法に適応されています。

      ー私自身も長年の模索の上、現在ではヨガチューナップを含んだ身体的療法をいくつか取り入れています。

      ー世界中の方々が平穏な気持ちで過ごされるためには、ご自身の神経を理解すること大切なことはありません。僭越ながらただいまこのトピックで一般の方向けの書籍を執筆中です。

      Kyoko Jasper

  2. mayumi より:

    私の体験になりますが、数年前ある活動に参加をし、子育て家事、仕事との両立をする状況がありました。子供が寝静まってから毎晩のように自分が就寝する直前まで作業をする事がしばらく続いた頃、動悸や呼吸が浅く速くなるのを感じるようになり、やがて胃腸障害も出て体重激減、栄養失調…夜ベッドに入り静まり返ると自分の鼓動が気になって身体は疲れているのに眠れない事が続いてリラックスタイムであるはずの睡眠が苦痛となり、心身共にいっぱいいっぱいになりました。漢方を試したり、食事を見直したり思い当たる事を手当たり次第試してみる日々。そこでヨガをするようになり、お腹に手を当てて腹式呼吸を行うことを始めました。すると徐々心地よく眠れる時間も増えていきました。そして動悸や胃腸障害もいつの間にか改善して心にも余裕が生まれました。こちらのブログ、動画を拝見し、自分に当てはまる事ばかりで驚きました。あの頃は交感神経が優位になる事が多く興奮状態、まさに「逃走か闘争」反応の状態だったのだと思います。思い返すとその頃はかなり予定を詰めていたので「つながる」ことからも少し遠ざかり発散の場も無い状態。そういう時ほど友人とゆっくり食事をしたり、おしゃべりしたり発散する事が大切だったのだと思います。

  3. AKEMI UMEZAWA より:

    2、3年前位にマインドフルネスを学びました。それまではヨガで「YOGAS CHITTA VRITTI NIRODHAH.」を学び、それが最終地点、乱暴に言うとそれを行っていれば良いと思っていました。腹式呼吸を行い、副交感神経を優位にして心の波を立てないように。そしてレッスン中に会員の方々にもお伝えしていました。しかしマインドフルネスを学んでからは、意識的に自分のに目を向け、状態を観察し、内側にスペースを空け、心に負荷が掛かった時でも素早く元の自分に戻れるようになれました。せっかち(自認している)が改善され、内側の意識が変わったのが分かります。
    最近日本では「あおり運転」が問題になっています。問題になっているのにあおり運転をする人が後を絶ちません。イライラしているのか、怒りを抑えられないのか分かりませんが…。
    今回ポリヴェーガル理論を初めて知り(ヴェガス神経も)、より私達の神経は複雑で繊細なんだなと感じました。現代の社会はストレスを感じる事が多く、そしてその事に気付いていない人もいると思います。心身ともに、ストレスからの解放のお手伝いが少しでも出来ると良いなと思います。

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