背骨はS字型〜その1

子供の頃母親にいつも「まっすぐ立ちなさい。」と言われていました。「背中をピンと立てて歩くのよ。」 わが家庭では背中をまっすぐにして立つ、というのが標準となっていたのです。学校に行く時、母が窓から覗いていたのを知っていたので、私は懸命に背中をピンと伸ばして「正しく」歩こう、と頑張ったものでした。19歳の時にダンスを始めたことで私の背中はさらにまっすぐに、平坦になっていきました。バレエのクラスでは特に、お腹を絞って背中を引き伸ばす習慣が出来たのです。毎日ストレッチをすることで体はどんどん柔軟になっていきましたー、脚を頭まで蹴り上げることができるから私は体が柔らかいんだ、と信じていました。今思うと体のバランスは良くなかったと思います。10年以上のダンスと、ミュージカルの経歴を通して体を故障したことは一度もありませんでした。若かったんでしょうね。本当にラッキーだったと思います。特に問題もなかったし、自分の体について学ぶ必要もなかったのです。動くことは大好きでした。なので40歳でヨガを見出した時、 活動的なヴィンヤーサ、アシュタンガやダーマヨガに自然と引き込まれていきました。クラスでは呼吸に意識を向け、音楽に合わせて何も考えず体を動かしていたらよかったのです。おりしも9-11テロ事件の直後で、ニューヨーカーたちが心の平安を取り戻すためヨガクラスに押し寄せていた、ヨガのブームの始まりの頃でした。体をストレッチすることは気持ちがよかったので、私は限りなくストレッチし続けました。ヨガジャーナルの表紙を飾る美しいヨギーニたちのようになりたくて、毎日クラスに通い、不可能としか思えないポーズに挑戦し続けました。

 

やがて私の体は内側から崩れ始めたのです。一日中立っていても座っていても歩いていても横になっていても、体が痛くないときはありませんでした。ヨガのクラスの終わりに安楽のポーズであるシャバサナから起き上がるのも大変なくらいでした。自分の痛みについて、仲間と話をすることもほとんどありませんでしたー痛いのは自分のせいで、恥じるべきことだ、と思っていたんです。練習の仕方を変えざるをえなくなり、アラインメント中心のクラスに通うようになりました。2003年、あるヨガの流派が脚光を浴びていました。アライメント重視の流派だったので、そのヨガのクラスに通い始めましたが、どの先生のクラスに行っても聞くのは同じ指示。特によく聞いたのは「尾骨をタックして(たくしこんで)」というものでした。当時私は腰痛に悩まされていましたので、先生に質問したものです。「どうしたら腰痛が改善されますか?」その答えは「尾骨をタック(たくしこんで)」というものでした。当時私は腰痛に悩まされていましたので、先生に質問したものです。「どうしたら腰痛が改善されますか?」その答えは「尾骨をタックしてみて。」というものでした。私は家に帰って、尾骨をタックする練習をしたものです。自分の体に何が起こっているのかさっぱりわからず、先生の言っていることに盲目的に従いました。その当時は私自身もヨガの指導を始めていて、それらの言葉を教えに取り入れ始めていたんです。「尾骨をタックして」から始まり、「上腕を関節に引き込んで。」、「腕を頭の上に上げ、肩甲骨は下にスライドさせましょう。」などなど。そういった指示はすべての人には適応しないのではないか?など考えもせずに。私の体は一向に良くはならず、悪くなっていく一方。

 

2005年に、あるヨガのトレーニングの最中に西海岸でカイロプラクターに背中を見てもらった時、こう言われました。「君の背骨は逆湾曲している。」と。「こんなのは他に見たことがない。上から下まで完全に逆向きだ。」当時の私にとってこれは新しい情報で、それがどんな意味なのか、全くわかりませんでした。彼は微調整をすることができるカイロプラクターを探して、診察を受けることを勧めました。NYに戻ってカイロプラクターを見つけ、腰椎の4,5番の椎間板が飛び出している、という診断を受けました。彼のもとで背骨を調整してもらい、私の背骨はどんどん緩んでいきましたが、痛みを解消することはできませんでした。その頃には私は少しずつ自分の体を知るようになっていました。私の背骨は平坦で硬く、可動性はゼロでした。アップドッグが大変なのも当たり前です。でも以前からそうだったわけではないはず。ダンスをしていた頃は、難なく後ろに反ることもできましたーじゃどうして今こんなに苦労しているのでしょう?尾骨をタックし続けたことで、それでなくても平坦な背骨がさらに平らに、より固くなってしまっているとしたらどうでしょう?

(その2に続く)

 

5 thoughts on “背骨はS字型〜その1

  1. Hikaru .k より:

    私達は人と洋服が同じだと嫌だったり、恥ずかしかったりするが
    自身の可動域や動き方を知らずにがむしゃらに練習して怪我をしている人を多く見受けられます。
    自身も身体が硬いのに先生に言われ続けて無理をして半月板を痛めた経験があります。
    その時はみんなと同じで無いと恥ずかしい思いや劣等感など色んな思いが巡ってクラスを受けていました。
    今もまだその気持ちはあるかもしれませんが、先ずは何故出来ないかを考え動かす様になりました。
    またそれは最近のヨガやピラティスのクラスにも活かせていると思います。
    世の中の情報はアップデートされていて選択肢は多いのに自身に合うものを考えなくて
    人の真似をする事を全ては否定しませんが自身の身体にはどうアレンジを加えたら良いかを考えていけたらと思いました。

  2. rie より:

    カラダを揺らすとリラックスするのを何となく分かっていながらも、日常では揺れを阻止しカラダを固めている(ロックしている)ことが多いなと、揺れる電車内で記事を読んでいて思いました。
    背骨がS字カーブを描いていることは、普段感じにくいが、S字カープであるからこそ衝撃から身体を守ることができると意識すると、自身の身体を愛しく思えてきます。
    揺れる電車内で考えます。なぜ揺れに逆らい止まろうとするかを。行きついた考察は、全身をガチっとロックさせる必要はないということです。身体の土台である足底を安定させ、可動性の役割である足関節で重心バランスとりつつ、膝関節は軽く屈曲させて安定する角度を探してキープ。その他は揺れに身を委ねると、小さな衝撃もS字ーカーブのクッションが受けとめているような感じがすると同時に、自然と身体が中心軸をサーチしてくれているように感じました。油断すると隣の人が倒れ込んできますけど…笑

  3. KAORI より:

    とても身に沁みて興味深い記事でした。みんな同じポーズを同じ指示で行い、出来なければ「自分がいけないんだ」「自分の体が悪いんだ」と感じていました。必死にみんなと同じに、みんなのようにもっと柔らかくストレッチしなければ、とストレッチし続けて、体を痛めた経験が私にもありました。心も体も十人十色。先生の指示通りに出来なくても、「自分が悪いんだ」と悲しんだり焦ったりする必要はないんですよね。私には私の調整方法があるかもしれない、そんな可能性を感じられる記事で、もっとヨガを楽しめる気がして嬉しくなりました。ありがとうございます。その2の記事も楽しみにしています。

  4. Chika より:

    自分の背骨のレントゲン撮りたいです。自分の体ってわかってるようでわかっていなくてわかってるような。。。
    風邪をひいて数日寝込んでいたら、体の回復に対して腰が痛くなっていきました。
    ああ、やっぱり同じ姿勢は良くないんだな、動くことが必要だと感じました。風邪から復帰し体を動かしたら腰の痛みは消えました。
    人の体は簡単に悪い癖にも良い癖にも馴染んでいってしまうので、癖づく前に修正できるようにしておきたいなと思いました。

  5. Chiaki より:

    身体は自分が作っている。
    ということを私も大分年齢を重ねてから知るようになりました。
    会社員時代は1日PCのデスクワーク。
    仕事が終わると疲れていれば駅前のクイックマッサージに駆け込み、
    余力があれば、運動も大事よねっとばかりに泳いだり、筋トレしたり。
    もともと身体が硬いので、柔軟になるかしら?とYOGAに通ってみたり。
    でも日常の身体の使い方が今の身体を作っているということがすっぽり抜けているから、
    結局すぐ元通りの凝り固まった身体に逆戻り。
    日常の動作の癖を理解し、痛みやコリとなっている原因に目を向けてボディワークをする必要がある。
    と最近すごく感じています。
    が身体はなかなか複雑で奥深し!
    骨や筋肉、身体の構造の知識を持つことはとても有効だなと感じる今日このごろです。

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